理事長ブリーフィング

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第一回

平成22年5月31日 理事長 清水克時

  昨年末に理事長に就任させていただき、半年が経過しました。この間に学会に対する働きかけがいくつかあり、それに対する学会(理事会)の意見をまとめる必要にせまられました。また、東京国際フォーラムで行われた、第83回日本整形外科学会学術総会の 小児整形外科分野 スペシャルティデイ プログラム の最後に、プログラムのサマリーおよび小児整形外科専門医像の提案を発表するように、四宮学会長から依頼されました。
今回は、これらをブリーフィングとしてまとめ、会員の皆様にお伝えしたいと思います。

理事長に就任後、JPOAに対する最初の働きかけは日整会から来ました。
12月17日(木)に日整会事務所で行われた日整会関係学会代表者懇談会において、三浪副理事長から「日整会の専門医制度と各専門領域の学会の subspecialtyとの兼ねあい」について、当学会の考えを連絡するようにとのご依頼をいただきました。
当日の会議には、日本小児整形外科学会の代表として、高山真一郎理事にご出席いただきました。
三浪副理事長が問われたご質問は:
アメリカ整形外科のsubspecialtyの枠組みの例をあげ(表1.)、「小児整形外科学会が、そのどれかのカテゴリーに入ることができるかどうか」を三択の形で答える質問でした。

 

表1.米国整形外科の中の専門領域の枠組み
Spine 脊椎・脊髄外科
Hand(& Upper Extremity) 手の外科(上肢外科)
Paediatics 小児整形外科
Oncology(Tumor) 腫瘍整形外科
Sports スポーツ整形外科
Adult Reconstruction 成人再建外科
Foot & Ankle 足関節・足部外科
Trauma 外傷(整形外科?)
Rehabilitation 運動器リハビリテーション

 

1.Subspecialtyの枠組みのどれかに入ることができる。
2.全く違う枠組みを考えている。
3.Subspecialtyの枠組みには入らない。

このご質問に回答するために、理事会、役員会のなかでメールと電話による論議を行いました。

例示された枠組みのなかに「Paediatics 小児整形外科」があり、日本小児整形外科学会がこのsubspecialtyに入ることができるとい うことに関しては、学会役員内で異論はありません。したがって、今回のご質問への回答は1.としました。

しかし、今回の日整会からの質問の延長上に、日本専門医制評価・認定機構が持つ、Subspecialty専門医制度の将来構想を重ねると、日本小児整 形外科学会役員のなかで、コンセンサスは得られていません。小児整形では日本脊椎脊髄病学会や、日本手の外科学会のようにSubspecialty専門医 制度は具体化していませんし(表2.)、脊椎外科や手の外科と同じような形の専門医制度が必要かどうかについても議論中です。

 

 

理事会、役員会のなかで行われたSubspecialty専門医制度の議論のなかで、小児整形の特殊性が指摘されました。つまり、脊椎や手の外科のような、部位別の専門、リウマチや腫瘍のような、疾患による専門とことなり、小児整形はいずれのSubspecialtyとも重複する分野を持つという点です。部位別や疾患別のSubspecialtyを織物の縦糸とすると、小児整形は横糸のようなものだとたとえることもできます。このことは、もし将来、Subspecialty専門医が複数申請できない事態になった場合に問題を生じます。

また、小児整形を担当するのが小児整形のSubspecialty専門医に限定され、一般整形外科医の手を離れるようなことになると、医療の供給が不足するのは明らかです。小児整形外科の診療は整形外科専門医にも相当な範囲を担っていただく必要があります。
そこで、今回のご質問に対する回答に加えて、日本小児整形外科学会の理事会は、日本整形外科学会に対し、以下のような提案をしました。

① 小児整形外科のSubspecialty専門医制度を検討する際には、
上記のような小児整形外科の特殊性を考慮する必要があること。

② 日本小児整形外科学会は、日整会の小児整形外科委員会と協調して、
Subspecialty専門医制度の形を主体的に検討する。

③ 同時に日本小児整形外科学会は基本領域である整形外科専門医(認定医)に働きかけ、
小児整形外科の知識や技術を普及する努力をする。

回答に加え、以上の3点を日整会に連絡しました。

現在のところ、日本小児整形外科学会では、Subspecialty専門医制度、および法人化について具体的な計画はありません。社会の情勢、日本専門医制評価・認定機構(専認構)の動きを見ながら、学会全体の意見をまとめて行きます。その場合、制度を作ることが目的ではなく、たくさんの若い整形外科医が小児整形外科を志望し、研修に熱意が持てるという視点が大切であることを確認しておかねばならないと思います。

2つめの働きかけは非医師からの入会申し込みでした。日本小児整形外科学会には非医師の入会規定はなく、入会を認めるためには会則の改訂が必要です。この件については、学会あり方委員会で検討を始めました。

これまでにも、理学療法士や看護師が学術集会で発表することを学術集会会長の裁量で認めてきた実績があります。今後も、このような形であれば、学会の活性化委のために、非医師の参加をできるだけ受け入れるというのが一致した意見です。しかし、今回の入会申し込みはアカデミックポジションについている医療専門職からの依頼で、キャリアのために会員になりたいというご意向です。あり方委員会の意見は、できるだけ非医師にも門戸を開くのが良いというのが大勢ですが、医療類似行為者をどのように制限するのかについて、会則の文言を検討する必要があります。学会あり方委員会で、十分に検討することになりました。